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2005.03.12

アニメ「サザエさん」2代目「ワカメちゃん」勇退

アニメ「サザエさん」の「ワカメ」の声優を務めている
「野村道子」さんが「活動の場を広げたい」…と勇退!
「65歳」から「39歳」の「津村まこと」への「交代劇」
「29年ぶり」となる「声変わり」が与える影響や如何?
【29年間…2代目「ワカメちゃん」野村道子さん勇退】(サンスポ.com)

愚図愚図と酔いしれて…【065】

 家の玄関で兄のバイオリン演奏を、勲は別世界の音色のように聴いたものだ。長男長女を早くに亡くした父と母は、兄を手塩に掛けて育てた。浜寺水練学校で体を鍛え、フィギァスケートをスイスイこなす兄は、幼い勲の目にも、兄弟の中で育ちが違う存在に見えた。
 兄は弘子の家にも、よく通った。弘子のピアノと兄のバイオリンの協奏―それを傍で紅茶でも飲みながら聴く、弘子の父と母―やはり、別世界だ。
 高校を卒業した兄は、大阪S大学の工学部に進む。兄は将来、分析化学を生かした仕事を目指していたようだ。父も母も家業の印刷工場を兄の為に、転業してもいいと考えていたのかも知れない。しかし、そうはならなかった。
 藤田家、内山家双方とも兄と弘子の婚約は、既定の事実として捉えていた。そこに問題が生じたのである。
 内山家は一人娘の弘子に、兄を養子に迎え入れる条件を提示した。その上、兄が医者になって内山医院を継ぐことも条件とした。藤田家の父母にとっては、まさに青天の霹靂である。女なら、蝶よ花よと育てたというのだろうが、兄は事実、そのように育てられた。事実上、藤田家の長男として父母は、大切に大切に育てた。その息子を養子に出す。易々と承諾できる条件ではない。父母とも藤田家の養子に入って苦労を重ねたからこそ、余計に譲歩できるものではない。
 しかし兄は、弘子との結婚を最優先に内山家の条件通りに身を処した。S大学の二年間の教養課程を終え、東京のT医科大学の編入試験に合格。この年まで大学同士の編入制度があった。晴れて兄は四年間の医大生活を送る事となる。弘子が神戸の名門女子大を卒業するのを待って、二人は婚約した。東京世田谷区に小さな居を内山家が用意し、二人の東京生活が始まる。そして一年後、兄は学生結婚した。

愚図愚図と酔いしれて…【一挙掲載版】

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2005.03.11

競馬「JRA」現役最年長!岡部幸雄騎手!引退

「JRA」現役最年長「56歳」ジョッキー「岡部幸雄」
「2943勝」という「最多勝」記録保持者が!現役引退!
近年は「故障」がちで「遠からじ」と感じていたものの
「同年代」が「舞台」を降りる「事実」に…寂寥の感!
【岡部騎手引退、サンケイスポーツ独占手記】(サンスポ.com)

愚図愚図と酔いしれて…【064】

 勲は、この春休み、劇団を辞めた。
 松竹新喜劇の座付き子役みたいな勲は、当初のように劇団に通う必要は無かった。劇団に通うのは研究生で、子役の仕事をレギュラーにする劇団員は、タレント扱い。仕事が入ればその都度、劇団から連絡が入り、稽古・本番と仕事をこなす。
 勲が四年の三学期を迎えた頃、劇団「こびと座」は、分裂した。副団長の宮本先生が新しい劇団を旗揚げしたのだ。母の意向で勲は、新劇団に移った。新しい劇団という事で、勲は以前のように週三回、劇団に通った。また『外郎売り』『あめんぼの歌』からの出発だった。新橋演舞場の初舞台から二年余り―子役としてデビューした勲にとって、一からのスタートは、ある種の屈辱でもあった。母には叱られるかも知れないが、勲は退団を決意した。その心境を伝えると、母はあっさりと了承してくれた。その頃の母は、胃が痛いと度々、仕事を休み、寝込むこともあった。勲には、その変調が分かるような気がした。

 一番上の兄は、東京の医科大学に入学していた。その兄は二十三歳で学生結婚する。相手は高校時代の同級生である。その経緯(いきさつ)は・・・
 兄の通うK高校は男子校、兄の妻になる内山弘子の通うS高校は女子校。当時、文部省の政策で男女共学が推進されていた。K高校の男子生徒半分と、S高校の女子生徒半分が入れ替えされた。兄はK高校に残り、弘子がK高校に編入してきた。運命の出会いである。兄はバイオリンの個人教授を受けていた。後の有名女性バイオリニスト、辻久子と一緒にその父の指導を仰いでいた。一方の弘子は、医者の一人娘で幼い頃からピアノを習っていた。その二人が恋に落ちるのに、時間は掛からなかった。

愚図愚図と酔いしれて…【一挙掲載版】

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2005.03.10

伊原剛志!公式ブログ「志して候う」と「藤田勲」?

「大阪育ち」の役者「伊原剛志」の「公式ブログ」が!
「志して候う」として「連載開始」…「時代」は違えど
彼が描く「世界観」は…「愚図愚図と酔いしれて…」の
「藤田勲」を!演じて貰いたい「衝動」を掻き立てる!
【伊原剛志・志して候う・伊原流ビジネス道】(ココログ)

愚図愚図と酔いしれて…【063】

 午前八時半―本山正継から電話が入る。
「あ、あ、本山です。朝早くから済みません。今日、事務所、出られますか?」『イサオ・プロダクツ』のベランダでの〝おやじ宴会〟 の一員、元OBSラジオ・プロデューサー氏、七十二歳である。
 勲と本山の出会いは、勲がF映画制作のディレクターの職を辞し、フリーランサーになり、テレビやラジオの番組構成に転身した後である。大学受験で四浪した勲は、三男の兄の縁故でテレビ制作プロダクション・F映画制作に入社。制作進行からディレクターになり三年が経った二十五歳で退職する。
 毎週月曜日から金曜日の朝、九時から十一時まで放送のOBSラジオ番組『ごきげんさん大阪リクエスト』の構成を勲は担当していた。水曜日のディレクターが本山正継、四十一歳。元アナウンサーの本山は東京出身の痩身でダンディーな男である。勲が本山との親交を深めるのは、十四年後、本山が韓国KBSラジオ日本語放送の校閲委員に出向してからのことである。本山は韓国から帰国後『イサオ・プロダクツ』の事務所内に〔大阪ソウル会〕を発足させる。
 この朝の電話は、大阪ソウル会の幹事会を事務所で開きたい旨の連絡である。
「いいですよ、今日は自宅で雑用があるので事務所には出ません」フリーターは、気ままなものだ。
 早朝から、アルバム整理にかこつけての迎え酒。独り暮らしも又、気ままなものだ。アルバムには、五年一組の集合写真が貼り付けられている。昭和三十四年―。

 新学期の組み替えで勲は五年一組、杉山学級の生徒となる。六年までの持ち上がりだ。
 杉山竜馬―校内一怖い先生で〝ライオン〟の異名を持つ。朝礼の時、杉山は「前に~習え!」を「前に~ウオッ!」と叫ぶことから〝ライオン〟と呼ばれる。勲は、この教諭の組にだけはなりたくなかった。四年生の時のソフトボール決勝戦敗退の記憶は、まだ忘れていない。これからの二年間は、試練だ。もう、子役の仕事も無い。学校も休めない。

愚図愚図と酔いしれて…【一挙掲載版】

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2005.03.09

フジテレビ「恋におちたら」見所「ライブドア」処遇?

「ヒルズに恋して」という「仮題」が発表された当初は
「ライブドア」の「堀江貴文」社長が「モデル」とも?
噂されたわけだが!「全面抗争」の煽りを喰う格好で?
「ストーリー」まで「変更」になっているとのこと!…
【草なぎ剛“ITドラマ”ロケがハワイでクランクイン】(サンスポ.com)

愚図愚図と酔いしれて…【062】

 勲は口を開こうとしたが、何か違和感を覚えた。事故の傷は、頭部中央右、右眉毛の中、右目尻、上唇の右、左足脛の膝小僧の下に裂傷、いずれも何針か縫う。そして、左鎖骨骨折の全治三ヶ月の重傷―院長の診断書―
 抜糸までの十日間、勲は大西病院に入院。外のコンクリートの通路で、ガチャガチャ、ローラスケートの雑音が聞こえる。

 二ヵ月半で、剣道の胴の様なギブスが取れる。「なんか体、軽なって宙に浮きそうやわ!」鎖骨は、完治した。
 三学期も終わりに近づき、四年三組の茶話会が開かれた。ジュースとお菓子の子供達のパーティー。全員が何か得意なものを披露する。この頃の子供の芸と言えば、テレビ番組の主題歌位が精一杯。個人で集団で次々、披露して行く。勲に順番が回ってくる。
 ♪風は~気ままに 吹い~て~いる 
  鳥は~気ままに 鳴い~て~いる
  ど~せ~ 男~と 生まれたからにゃ~
  胸の~炎は~ 気~ままに 燃やそ~
  意気~と 度胸~の 人生だ~
  ま~ま~よ 嘆くな~ 愛し~ぃお~前
  明日~は~明日~の 風~が~吹く~
 日活映画『明日は明日の風が吹く』主題歌
 唄 石原裕次郎
 「小学校四年生の唄う、歌ですか!」
 担任、磐田敦子 通称名、ホルモン―彼女の叱声の中で、勲の四年生は、終わった。

愚図愚図と酔いしれて…【一挙掲載版】

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愚図愚図と酔いしれて…【一挙掲載版】其ノ六

愚図愚図と酔いしれて…【051】

 決勝戦は一組対三組。ライオン対ホルモンだ。三組が先攻、トップバッターの中村は、先の試合同様、ファーストストライクをライト前、ヒット。「あいつを仲間にしといたら良かったんや」二番、宇都宮が勲を見ながらバッターボックスに入る。勲は、プイと横を向く。無視だ。又、三組の応援団席が姦しい。宇都宮が三塁前に、セイフティーバント。虚をつかれたサードは、焦ってボールを弾く。一、二塁オールセーフ。「じんけ、やったら出来るんや…次は大蔵かぁ…」前の試合で唯一打点を叩き出した、ヒーローだ。又も初球を狙い打ちした大蔵の打球は、サードゴロ。5―4―3のダブルプレー…と思いきや、セカンドの宇都宮だけがフォースアウト。ワンアウト、一・三塁、勲は、胸に秘める思いを抱きながらバッターボックスに入る。「前の試合は、三タコや…ここでええとこ見せんと四番の恥や…操ちゃんにも、ええとこ見せんと…」「ストライクォ~ッ!」主審は、まだライオンだ。「先生、ボクまだ構えてません!」「バッターボックスに立ったら、オンプレーや!」大体、敵チームの担任が主審を務めること自体、おかしいと勲は思う。磐田先生の方を見遣る。「ストライク、ツーォワ!」又、余所見の間に、ツーストライクを取られる。もう、頭に来た。勲はピッチャーを睨み付け、バットのグリップに力を込める。
 三球目、外角にボールは向かって来る。勲は外角の球をレフトに引っ張るのが得意だ。大蔵は「外角は右に流し打ちすんのが、基本や」と、常識論をぶつ。「常識で野球やって何がオモロイんじゃ!」外角球をバットの先で、思い切り引っ張る。ボールはレフト方向にグングンと延びていく。サードから中村ホームイン、大蔵はセカンドベースを回る。ボールはレフトの頭上を越え、転々として花壇の中に吸い込まれる。大蔵ホームイン、勲はセカンドを蹴って、サードへ。左翼手は花壇の中のボールを捜している。その様子を確かめて勲は、サードを回る。ボールをやっと見つけたレフトが、ホームへ投げる。時すでに遅し、勲、ホーム生還、先制のスリーラン。
 ボールは三組の花壇に入ったのだ。おじぎ草が、おじぎする。応援席の操が、万歳を繰り返している。

愚図愚図と酔いしれて…【052】

 3対0で最終七回の裏、ツーアウトを取って安心したのか、勲は二者連続の四球を出す。大蔵がマウンドに、ツカツカと歩み寄って来る。「藤田、あせるな、次は左バッターや、外角投げてサードゴロ打たせ、俺がセカンドでフォースアウト取ったる!」流石は副キャプテンや、頼りになる。勲は外角を攻める。作戦通りサードゴロ、前進してきた大蔵のグローブにボールは、スポッと入る。左利きの大蔵は、体を右に大きく一回転させ、セカンドベースに素早く投げる。間一髪……セーフ。「…そやから、左利きのサードはアカン言うたんや…」勲の胸は、はち切れんばかりに鼓動を打つ。
 ツーアウト満塁、バッターボックスには青洟をすすりながら、三番の村瀬登が入る。「こいつ、アホのくせにどういう訳か、運動神経だけは抜群なんや…」勲の頭に小さな不安がよぎる。勲は自分の一番得意な、外角ストレートを渾身の力を込めて、投げる。パカーン、ライト線ギリギリの流し打ち、ボールはライトの鈴木の左を、転がって行く。運動場は、正方形ではなく、ライト方向に広い。鈴木はドタドタとボールを追う。三塁、二塁、一塁ランナー次々ホームイン。3対3の同点、村瀬もサードを回っている。万事休す―三組、七回の裏、逆転満塁サヨナラ・ホームランで敗北。
 ホームベースを挟んで、両チームが整列する。「4対3、一組のサヨナラ勝ち、一組の優勝ウォ~ッ!」「ありがとうっした!」両軍、ベンチへ・・・肩を落とす勲に、ライオンが追い討ちをかける「藤田、百点取られてたかも分からんぞ」「そんな点、入るわけ無い…」「サヨナラやから一点差で試合は終わる、そやけど続けてたら百点入ってかも知れんやないか…」
 勲は、咽喉の奥に得体の知れない塊が棲みついている様な、悔しさを感じた。涙がボロボロ、夕陽に照らされたグランドに、落ちた。

愚図愚図と酔いしれて…【053】

 F小学校には、多くの在日朝鮮人の子供達が通っていた。その存在を勲は、この時点では全く知らない。
 一九一〇年の【日韓併合】以前から、日本には留学生や季節労働者として働く朝鮮人が在留していた。その数は併合後に急増し、一九二〇年代以降は定住化が進んだ。日本に渡った人々の九割以上は朝鮮半島の南部地域―現在の韓国の慶尚道、全羅道、済州島―などの出身で、中でも済州島出身者は最盛期といわれる一九三四年の調査では、全人口のほぼ五人に一人が日本で生活していた。
 済州島出身者の多くは、大阪とその周辺に定住した。特に猪飼野地域―大阪の在日朝鮮人が集住する地域の名前。一九七三年の町名変更により、現在「猪飼野」という町名は姿を消した―は『小さな済州島』と呼ばれる程の集住地域となった。
 一九二四年の調査によれば、在阪朝鮮人のうち済州島出身者は六〇パーセントに達していたという。勲の住むH区と南に隣接するI区一帯は、古来より「百済郡(くだらごうり)」と呼ばれ、朝鮮半島からの渡来人ゆかりの地でもあった。
 勲の家の西一本目の筋、有沢農機の敷地を南北にえぐる様に三軒長屋がある。その真ん中の家に、在日朝鮮人の老夫婦が住んでいた。おばあさんは、白髪頭を後ろで束ね、いつも生成りのチマ・チョゴリを着、先がちょこんと尖った白い朝鮮靴を履いていた。近所の長屋の子供たちは、そのおばあさんの姿を見かけると、合唱する。「ちょせん、ちょせん、ぱかするな、おなち飯喰て、とこちかう…靴の先が、ちょと、ちかう!」そう言って、退散する。
 下校時、勲は初めてその光景を目にした。そんな遊びをしたことが無い。家に帰って早速、母に今見たことを問う。「お母ちゃん、ちょせん、ちょせん、ぱかするな…」「止めなさい!誰にそんな唄、教えてもろたんや!」「あそこの長屋の子ぉらが、うとてたんや」「あの子らとは、絶対遊んだらあかんよ、分かったね!」凄い剣幕で母に叱咤される。
 母が勲の質問に答え無かったのは、二度目だ。F駅の地下道で哀しいメロディーのアコーデオンを奏でていた、傷痍軍人―。
 勲は幼心に、傷痍軍人と在日朝鮮人のおばあさんと、どんな関係があって母が口を噤むのか、不思議でならなかった。
 その疑問は、中学に入学してから知らされる事となる。

愚図愚図と酔いしれて…【054】

 昭和三十三年も暮れ、三十四年の三学期―。勲の石原裕次郎狂いの付けが回って来る。相変わらず勲は、カバヤキャラメルのおまけ券を集めては、映画館に通った。この頃、父も裕次郎映画を観るようになっていた。どういう風の吹き回しかは知らないが、勲にとっては吉報だ。母に気兼ねする事無く、裕次郎映画が観られた。映画の中で裕次郎はGパンを恰好良く決めていた。勲は母にねだるのだが「不良の履くもんや!」と、取りあってくれない。同じ組の木村というキリンみたいな顔をした奴も、裕次郎の大のファンだった。その木村が新学期早々、茶色のGパンを履いて登校した。「おっ、Gパンやんけ!自分、それどこで買うてん?」「深江市場や!」「なんぼやった?」「四百六十円や」「ふぅ~ん…四百六十円かぁ…」深江市場は勲が母の使いで行く深江橋市場より遠い所にある。
 その日、帰宅した勲は、母が工場で仕事をしている姿を確かめてから、奥の間の違い棚の小さな戸棚の中から、勲名義の郵便貯金通帳と印鑑を取り出した。正月に勲が貰った年玉を母が貯金しておいたのだ。通帳には五百円が入金されている。「買える…」自転車に飛び乗り、郵便局へまっしぐら!四百六十円を引き出し、通帳と印鑑を元に戻した。
 次の日の放課後、勲は木村に言う「おい、これから深江市場にGパン買いに行くから、ついて来てくれへんか?」「えっ、藤田も買うんか?」「お年玉おろしたんや!」勲は木村を引き連れて、市場の洋服屋で念願のGパンを買う。裾直しをしてもらい、木村と別れて家に帰る。早速Gパンを履き、奥の間の母の三面鏡の前で繁々と見つめている鏡の中に、母の姿が映る。「勲、そのGパン、どうしたんや?」母の目が釣り上がっている。「……深江市場で…こうて来てん…」「お金、どうしたんや?」「お年玉、おろしてん…」「お母ちゃんに内緒でか?」「……そやかて、あのお金、ボクのお年玉やんか」その刹那、母の平手が勲の頬を激しく、打つ。「誰がお前にお年玉くれるんや!お父ちゃんが居てはって一生懸命に働いてはるから、その子供のお前にくれはるんや!それが分からんのか?」「堪忍、お母ちゃん、堪忍!」勲は中の間へ逃げる。「そんなことぐらい分からんのか!お母ちゃんはお前をそんな風に育てた覚えは無い!」母の平手は続く。勲は掘り炬燵の足にしがみ付いて、大声で泣き叫ぶ。「お母ちゃん堪忍して、堪忍してぇ!」今、勲は理解した。お年玉は自分のものでは無い、父が居て母が居て、そしてその子供の勲に、お年玉をくれる。勲は泣き叫びながら、Gパンを買ったことを幼心に悔いた。「藤田はん、そのぐらいにしといたり、勲ちゃんかてこうして謝ってるやないの…」それほど勲の泣き声は想像を絶するものだった。止めに入ったのは向かいの山下の奥さんだった。

愚図愚図と酔いしれて…【055】

 顔を腫らした勲は、まだ泣きじゃくって山下家の居間に座っている。
 山下家の親戚筋は、ミナミの大阪球場近くで厨房器具の卸業をしている。球場が近い事もあってフランチャイズの「南海ホークス」の選手や他のプロ野球の選手と懇意の仲である。「阪神タイガース」を家族全員で応援している藤田家の勲は〔牛若丸〕の異名を持つ球界きっての名遊撃手・吉田義男の大ファンだ。やっと泣き止んだ勲の前に居る、山下の奥さんに勲はせがんで、吉田義男のサイン色紙を貰ったことがある。色紙は宝物として勉強机の前に飾ってある。
 家にテレビの無い勲は、プロ野球の中継や大相撲の中継を山下家で、よく観せて貰っていた。そんなよしみで、山下の奥さんは勲を母から庇ってくれたのである。奥さんはこの日、勲を自宅に泊めた。
 この日を契機に勲は、父と母に挟まれて寝ていた一階奥の間から、二階で姉と上の兄の三人で寝ることになる。勲は母の横で寝る時、いつも母の乳房を触りながら、眠りに就く。ある時は、乳首を吸いながら眠る。その事を四つ違いの上の兄が「四年にもなって、カッコ悪ぅ!」と揶揄する。末っ子で甘えたな勲を、母離れさせる為の、今日の平手だったのかも知れない。虎の母親が子を千尋の谷に落とすように…。
 この頃、勲に異変が起こる。
 隣の佐川製本所にテレビのプロレス中継をよく観に行った。毎週金曜日午後八時の『ダイヤモンドアワー』三菱電機提供の高視聴率番組である。ウォルト・ディズニー劇場とプロレスリング中継を隔週で放送する。両番組とも凄い人気だった。とりわけプロレス中継は日本中の老若男女を熱狂させた。力道山・吉村道明コンビが、並み居るアメリカの巨人レスラーを薙ぎ倒す。ストーリーはこうだ。

愚図愚図と酔いしれて…【056】

 今夜の相手は世界最強コンビのシャープ兄弟。レフェリーの沖識名の合図に合わせてゴングが鳴り、まずシャープ弟と吉村がリング中央で額と額を合わせ、腕をからませて組み合う。弟がヘッドロックで吉村の首を取る。すかさず吉村は首を抜き両手で弟の背を押し、ロープに追いやる。ロープの反発力を利用して弟は吉村に向かって襲い掛かる。一瞬、吉村はその場でジャンプし、両足を揃え飛び蹴りを見舞う!倒れる弟の体の上に吉村は、覆い被さる。ワン、ツーで弟は両手で吉村の体を吹っ飛ばす!双方、睨み合う。又、リング中央で組み合う。弟は吉村の背後にスッと回り込み羽交い絞めを掛ける。そして吉村を盾にして味方コーナーに向ける。その瞬間、兄はコーナーから飛び出し、吉村の胸板めがけてニードロップを突き刺す!倒れた吉村に兄弟は容赦なくキックの嵐を浴びせる。二人が同時にリングに入れば反則、沖識名は兄に反則のカウントを始める。ワン、ツー、スリー、フォー・・・力道山が吉村を救出すべく、リングに入る、それを見た沖識名は力道山に向き直ってカウントを始める。この間、吉村は弟がトランクスに隠し持った凶器(栓抜きが多い)で、額をメッタ突きされ、夥しい鮮血を噴出す。これに抗議する力道山を制止し、沖識名はシャープ兄弟に反則を止めさせようと駆け寄る。弟は沖識名にも凶器を向ける。沖識名も血まみれになる。堪忍袋の緒が切れた力道山はシャープ兄弟に、伝家の宝刀《空手チョップ》の雨を降らす!兄弟はリングでノックダウン、血まみれの沖識名が、これまた血まみれの吉村道明の左手を、力道山の右手を高々と掲げ、勝利を宣言する。
 こうした戦いは、大抵、生放送中に日本タッグチームの勝利で決着する。会場の観客、テレビ桟敷の全国のファンが狂喜乱舞する。
 力道山は、日本のプロレスリング創始者・功労者というだけでなく、何よりも悪を退治する〝正義の味方〟として日本人の素朴な心捉え、絶大な人気を博した。
 しかし、この英雄も昭和三十八年十二月十五日、東京の夜の街で凶刃に倒れ、再び立ち上がることがなかった。三十九歳の若さだった。

愚図愚図と酔いしれて…【057】

 二階で姉と兄と眠っていた勲が急に起き上がり、窓辺に自作のベッドの上で眠る姉を乗り越えて、窓を開ける。そして、身を乗り出す。それに気付いた姉と兄が、勲を引き摺り降ろす。
 フッと意識が戻ると、勲は父の背に負われている。「……お、お父ちゃん……」「勲、目ぇ覚めたか?」「お父ちゃん、ボク、どないかしたん?」「なんでもない…もう一寸、歩こか…」「うん…」有沢幸男の家の前にT中学校がある。その回りを父は勲を背負って一周する。勲が奇妙な夢を見て、記憶が薄れ、妙な行動を取った夜に、父がいつも散歩してくれる道程である。父の背中は骨張っている。徳島の尋常小学校を出てすぐ丁稚奉公に出された父。油まみれになって、印刷工として働き続けた父。父の背中を見て、男の子は育つ。この頃の勲にとって父の背中は、揺りかごだった。 
〝夢遊病〟らしかった。この症状は、テレビのプロレス中継を観たその夜に、よく起こった。その瞬間、勲は必ず同じ夢を見る―真っ暗な無限の空間の彼方から、ま~るい球体がゆ~っくりと近づいて来る。その球体の表面は、灰色の荒野で、枯れた細~い木が数本、突き刺さっているだけ。SFの知識も、ましてや天体望遠鏡で宇宙の彼方なんて、観たことも無い。球体がどんどん迫ってくる。「ここ、どこやろ?」そう思った瞬間、勲の記憶は薄れて行く…。気が付くと、父の背中だ。
 医者に診てもらった記憶が無いから、勲の奇妙な症状は自然消滅したのだろう。プロレスと夢遊病―どんな因果関係があったのか?
 何故か母は、ここに来て、テレビジョンを買ってくれた。

 勲の家にテレビがやって来た日―それは、電灯に代わって蛍光灯がやって来た日と、比較にならない。
 電灯をはずし、蛍光灯を点灯した瞬間、世界は一変した。なんと明るいことか!勲のみならず家族全員が驚きの声を上げた。それまで、各部屋の天井は電灯の傘に遮られ、淡い光しか届かなかった。それがどうだ、蜘蛛の巣が張ってる箇所が出現したのだ。さあ大変、家族全員での蜘蛛の巣退治だ。

愚図愚図と酔いしれて…【058】

 テレビは、一家団欒の掘り炬燵のある中の間の隅に、鎮座した。他所の家では、床の間に飾っている所もある。それほどテレビは高価な電化製品だったのである。勲の家では、冷蔵庫は氷を入れて冷やす従来型、洗濯機ではなく、盥と洗濯板。『三種の神器』テレビ、電気冷蔵庫、電気洗濯機の一つ、テレビが勲の家にやって来た。電気テレビとは言わなかったが電気冷蔵庫、電気洗濯機とは言った。日本の電力消費量は、この頃から増大した。
♪明るいナショナル~明るいナショナル~ラジオ テレビ な~でも ナショナル~
松下電器のCМソングが、巷に流れ出したのもこの頃である。
 テレビが家に来たことによって、藤田家のライフスタイルが変わった。勲は学校が終わると、飛んで帰る。父や母の仕事が終わるまで、テレビを独占出来る。上の兄は中学、その上の兄は高校、姉は大学で忙しいのだが、夕方には帰宅し、晩御飯を一緒に食べる。一番上の兄は、東京のT医科大学で五学年目を迎えていた。晩御飯を終えると、藤田家の一家団欒のひと時が始まる。父はテレビが来るまで毎日、工場で残業をしていた。学習帳印刷の世界も進歩し、これまでの鉛製の版からゴム版に移行していた。鉛は柔らかくて版にし易いのだが、印刷の耐用時間が短い。その点、ゴム版の方は、軽いうえに版は長持ちし、印刷の仕上がりがいい。右隣の高山製本が新しい輪転機を購入し、ゴム版の印刷を始めた。それまでは藤田印刷が刷り上げた帳面を裁断し、製本に仕上げる仕事をしていたのだが、印刷から製本までの一貫作業を始めたのである。藤田印刷にとっては痛手だ。高山製本と、左隣の佐川製本に仕事を出していた藤田印刷の仕事が半減した。おまけに、藤田印刷に務めていた職人一人が、高山製本に引き抜かれてしまった。用意周到な高山製本の藤田印刷潰しだ。そこで勲の父は、独自にゴム版の開発を始めた。なにしろ手先の器用な父なのだが、たった一人での開発には無理がある。材料を仕入れ、ゴムを溶かし、版を組み、溶かしたゴムを版に入れ、成型する。マニュアル無しの実践、失敗の連続である。投資してもゴム版は出来ない。一年半後、成功するのだが、もう学習帳印刷の時代は衰退し、カラー刷りの出来るオフセット印刷の時代に移る。そんな経緯の中で、テレビがやって来た。父の残業は、減った。

愚図愚図と酔いしれて…【059】

 火曜日の夜七時からの『ザ・ヒットパレード』日曜日の夜七時からの『シャボン玉ホリデー』が、藤田家の人気ナンバーワンとツーである。どちらも、双子の女性デュオ、ザ・ピーナツと、ハナ肇とクレージーキャッツが共演する、歌番組である。この頃の番組編成は、歌番組とアメリカのテレビ映画が主流だった。テレビドラマと言わずにテレビ映画だった。勲が一番好きなのは、テレビ映画『ビーバーちゃん』勲と上の兄と同年代の兄弟を中心にした、今で言う〝ホームドラマ〟 ビーバーちゃんは大きなザリガニをペットにしたり、木の上に小屋を作ったり、勲好みのやんちゃ坊主。そこが気に入っている。「あんな真似したらアカンねんで!」と、早くも母は釘を刺す。家族全員が気に入っているのが
『ローハイド』♪ローレンローレンローレン~……ビシッ!ビシッ!……ローハ~イ ローハイド!
 フランキー・レーンのダイナミックな歌声と、鞭の音。荒野の中を牛の大群を追うカウボーイ。『ローハイド』は、タイトルからワクワクさせられる。牧童頭のフェイバーさん、若き牧童ロディ(クリント・イーストウッド)コックのウィッシュボーンらの織りなす、テレビ西部劇の最高傑作だ。
 父好みの時代劇、母と姉好みの雪村いづみ・江利チエミ(何故か母は、美空ひばりが嫌いだった)の歌番組、二人の兄の好みは分からなかったが、勲が嵌まった『少年探偵団』『月光仮面』等々、テレビは〔魔法の電気箱〕だった。
 かといって、勲の田圃をフィールドにした遊びが減ったわけではない。母に釘を刺された、ザリガニをペットにする夢を、勲は捨ててはいない。H区の北隣、J区にポプラ並木がある。その傍らに野池があり、アメリカザリガニが多く生息する。ザリガニ捕りの道具は細い竹竿の先に、二メートル程のタコ糸を結わうだけ。餌は蛙。野池に一杯いる。網ですくい、股を広げる。尻の穴に麦藁を一本突っ込み、吹く。蛙の腹はパンパンに膨らむ。地べたに蛙を仰向けに寝させ、足の裏で踏みつける。パン!後は皮を剥ぎ、身をタコ糸の先にくくりつける。子供というのは、実に残酷である。それを池の中に放り投げ、待つこと十秒……ザリガニはその爪で蛙の身を、シッカと挟んでいる。「いっちょう上がり!」釣った十数匹の中から[アカマン]と子供たちが呼ぶ、真っ赤でデカイ爪を持つ一匹を、持ち帰る。
 タコ糸をアカマンの胴体に巻きつけ、背中に白いペンキで〝ジョン〟と書かれたペットを、勲は散歩させる。すぐに母に見つかり、ジョンは生まれ育った野池に、返される。

愚図愚図と酔いしれて…【060】

 この年の暮れ、勲は事故に遭う。
 『中座』の十二月公演「昔話 もととり山」曾我廼家五郎八扮する、金の亡者の庄屋には、寝たきりの一人っ子、なる吉(勲の役名)がいる。今日も庭先の縁側に乳母が、なる吉を寝かしつけている。庭では庄屋が小作人たちに鞭を振るい、米俵を蔵に運ばせている。
「早ようせんかい、どん百姓どもが!早ようせい!…お前らがわしを金の亡者、金の亡者と陰口を叩いとうる事、百も承知しとるぞ!しかしなぁ、わしは何もお前らを憎んでそうしとるんやないぞ。みんな、あのなる吉の為や。不憫な子ぉや…わしはなあ、なる吉が歩けるようになってくれさいすれば、金もこの屋敷も、なにもかも、要らんのじゃい…」
 すると……縁側でうたた寝している乳母の前に寝ていた、なる吉の右手が、次いで左手が震えながら、天に向かって動いて行く……。両手が伸びきった次の瞬間、上体がムックと起き上がり、手は障子の桟を伝い、なる吉が立ち上がる。うたた寝から覚めた乳母、庄屋、百姓一同が驚愕の眼で見つめる中、なる吉は右手と右足、左手と左足を交互に揃えて、ゆっくりと歩き出す。その歩調に合わせて庄屋の体も動く。この五郎八の所作が客席の笑いを誘う。縁側の中央で正面に向き直ったなる吉は、両拳を握り、仁王立ちに。「な、な、なる吉が、歩いた!」腰を抜かした庄屋の横の敷石の上に、なる吉は飛び降りる。そして舞台下手に、先の歩みの格好で消えて行く。
「また、台詞無しや…」次に下手から、青年に成長した、なる吉が現れ、上手に闊歩して行き、消える。一同呆気に取られているその上手から、獅子の頭をして、顔には隈取を施した鬼が現れる。一同、二度、腰を抜かす。
 金満で守銭奴の庄屋の子は、鬼だった。「子が歩けたなら、金も屋敷も要らん」と発した事で、その正体を現した鬼が、庄屋を成敗する芝居である。鬼は藤山寛美だ。
 鬼はふたつの米俵を足に履き―米俵の上には草履の鼻緒が設えてある―大声を発しながら、花道へと消えて行く…庄屋家の身上は潰れてしまう。庭の敷石に飛び降りた、なる吉(勲)は捻挫してしまった。同じ「こびと座」の池田君が代役を勤め、勲は冬休みに入った。

【一挙掲載版】其の七
【連載】は…まだまだ続きます!ご愛読頂ければ幸いです!

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2005.03.08

「カムジン」小林旭&浅丘ルリ子!二人だけの秘密?

「大人が楽しむための」エンターテインメント誌?…
「カムジン」第4号の「特集」が…「浅丘ルリ子」と
「小林旭」の初対談!…今だから明かせる「秘密」?
「大人」が「気になる」ことは間違いないが!さて?
【「小林旭×浅丘ルリ子」-今だから明かす二人だけの“秘密”】(サンスポ.com)

愚図愚図と酔いしれて…【061】

 暮れの二十八日―勲は母に、年賀状の切手を買って来て欲しいと頼まれる。郵便局は、勲がいつも買い物に行く、市場のすぐ傍、深江橋の交差点の西にある。いつもなら歩く距離だが、捻挫した右足にまだ痛みが残るため勲は、自転車に乗った。年賀状の切手を買い、表に出て自転車に跨った時、国道の向かい側に住む同級生の大貫君が、声を掛けた。「おーい藤田、何してんねん?」「切手買いに来てん!ちょっと待って、そっち行くわ」国道を西から東、勲の視界では、右から左にトラックが走り抜けたのを見てから、自転車のペダルを踏んだ。………気が付くと、病院のベッドの上だった。

 目を覚ますと、母の顔が目の前にあった。「気ぃ付いたんか?勲…堪忍やで、お母ちゃんが切手買いに行かしたばっかりに、こんな事になってしもてからに…」母が泣いている。「泣かんでもええ、勲も気ぃ付いたんやさかいに…」父もいる「そやかて…勲、お母ちゃん、堪忍してや…」何が何なのか、勲には分からない。
 向かい側の大貫君の方に行こうと、自転車を漕ぎ出した勲は、行きすぎたトラックの陰から走って来た、西行きの中型トラックに撥ねられたのだ。大貫君から事故の知らせを聞いた勲の母は、腰を抜かさんばかりにうろたえ、五分で行ける病院まで、倍の時間を費やした。病院に着いた母は、手術室の前の長椅子にうなだれて座る、事故を起こしたトラック運転手を目にした。「うちの勲、どうなったんや?あの子は役者や、もしもの事があったらお宅、どうしてくれはるんでっか!」「すみません…トラックの陰から急にお宅の坊ちゃんが飛び出して来たもんですから…」「そんな事、どうでもよろし!勲の容態はどうですのん!」「私が担ぎ込んだ時、意識の方が…」「意識がどうしたんです!まさか…」「意識は無かったんですが、先生が大丈夫やと…」「何が大丈夫ですか!今もこうして手術中やないですか!」「……私にもお宅の坊ちゃんぐらいの子供がおりまして…事故の瞬間、その坊主の顔が浮かびまして、えらい事してしもたと…」「……」母は、黙ってしまう。

愚図愚図と酔いしれて…【一挙掲載版】

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2005.03.07

「ローレライ」潜水艦映画史上「最高興収」へ出航

潜水艦エンタテインメント大作!映画「ローレライ」が
「265スクリーン」で封切られ「満席」が相次ぐ好発進!
「潜水艦映画史上最高」となる「興収40億円」突破も?
ちなみに!近年では「U-571」の「約18億円」が最高!
【「ローレライ」潜水艦映画史上最高興収へ満席“出航”】(サンスポ.com)

愚図愚図と酔いしれて…【060】

 この年の暮れ、勲は事故に遭う。
 『中座』の十二月公演「昔話 もととり山」曾我廼家五郎八扮する、金の亡者の庄屋には、寝たきりの一人っ子、なる吉(勲の役名)がいる。今日も庭先の縁側に乳母が、なる吉を寝かしつけている。庭では庄屋が小作人たちに鞭を振るい、米俵を蔵に運ばせている。
「早ようせんかい、どん百姓どもが!早ようせい!…お前らがわしを金の亡者、金の亡者と陰口を叩いとうる事、百も承知しとるぞ!しかしなぁ、わしは何もお前らを憎んでそうしとるんやないぞ。みんな、あのなる吉の為や。不憫な子ぉや…わしはなあ、なる吉が歩けるようになってくれさいすれば、金もこの屋敷も、なにもかも、要らんのじゃい…」
 すると……縁側でうたた寝している乳母の前に寝ていた、なる吉の右手が、次いで左手が震えながら、天に向かって動いて行く……。両手が伸びきった次の瞬間、上体がムックと起き上がり、手は障子の桟を伝い、なる吉が立ち上がる。うたた寝から覚めた乳母、庄屋、百姓一同が驚愕の眼で見つめる中、なる吉は右手と右足、左手と左足を交互に揃えて、ゆっくりと歩き出す。その歩調に合わせて庄屋の体も動く。この五郎八の所作が客席の笑いを誘う。縁側の中央で正面に向き直ったなる吉は、両拳を握り、仁王立ちに。「な、な、なる吉が、歩いた!」腰を抜かした庄屋の横の敷石の上に、なる吉は飛び降りる。そして舞台下手に、先の歩みの格好で消えて行く。
「また、台詞無しや…」次に下手から、青年に成長した、なる吉が現れ、上手に闊歩して行き、消える。一同呆気に取られているその上手から、獅子の頭をして、顔には隈取を施した鬼が現れる。一同、二度、腰を抜かす。
 金満で守銭奴の庄屋の子は、鬼だった。「子が歩けたなら、金も屋敷も要らん」と発した事で、その正体を現した鬼が、庄屋を成敗する芝居である。鬼は藤山寛美だ。
 鬼はふたつの米俵を足に履き―米俵の上には草履の鼻緒が設えてある―大声を発しながら、花道へと消えて行く…庄屋家の身上は潰れてしまう。庭の敷石に飛び降りた、なる吉(勲)は捻挫してしまった。同じ「こびと座」の池田君が代役を勤め、勲は冬休みに入った。

愚図愚図と酔いしれて…【一挙掲載版】

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2005.03.06

Jリーグ開幕「ジュビロ」疑惑の「神の手」ゴール?

1986年に「マラドーナ」が演じた「神の手」ゴール?…
2005年の「Jリーグ」開幕戦で「再現」されるとは!…
「審判」も「人間」であるから!「仕方」のないこと!
やはり「VTR」という「神の眼」には敵うはず無し!
【誰が見たってハンド・・・福西の神の手で磐田、開幕戦白星】(サンスポ.com)

愚図愚図と酔いしれて…【059】

 火曜日の夜七時からの『ザ・ヒットパレード』日曜日の夜七時からの『シャボン玉ホリデー』が、藤田家の人気ナンバーワンとツーである。どちらも、双子の女性デュオ、ザ・ピーナツと、ハナ肇とクレージーキャッツが共演する、歌番組である。この頃の番組編成は、歌番組とアメリカのテレビ映画が主流だった。テレビドラマと言わずにテレビ映画だった。勲が一番好きなのは、テレビ映画『ビーバーちゃん』勲と上の兄と同年代の兄弟を中心にした、今で言う〝ホームドラマ〟 ビーバーちゃんは大きなザリガニをペットにしたり、木の上に小屋を作ったり、勲好みのやんちゃ坊主。そこが気に入っている。「あんな真似したらアカンねんで!」と、早くも母は釘を刺す。家族全員が気に入っているのが
『ローハイド』♪ローレンローレンローレン~……ビシッ!ビシッ!……ローハ~イ ローハイド!
 フランキー・レーンのダイナミックな歌声と、鞭の音。荒野の中を牛の大群を追うカウボーイ。『ローハイド』は、タイトルからワクワクさせられる。牧童頭のフェイバーさん、若き牧童ロディ(クリント・イーストウッド)コックのウィッシュボーンらの織りなす、テレビ西部劇の最高傑作だ。
 父好みの時代劇、母と姉好みの雪村いづみ・江利チエミ(何故か母は、美空ひばりが嫌いだった)の歌番組、二人の兄の好みは分からなかったが、勲が嵌まった『少年探偵団』『月光仮面』等々、テレビは〔魔法の電気箱〕だった。
 かといって、勲の田圃をフィールドにした遊びが減ったわけではない。母に釘を刺された、ザリガニをペットにする夢を、勲は捨ててはいない。H区の北隣、J区にポプラ並木がある。その傍らに野池があり、アメリカザリガニが多く生息する。ザリガニ捕りの道具は細い竹竿の先に、二メートル程のタコ糸を結わうだけ。餌は蛙。野池に一杯いる。網ですくい、股を広げる。尻の穴に麦藁を一本突っ込み、吹く。蛙の腹はパンパンに膨らむ。地べたに蛙を仰向けに寝させ、足の裏で踏みつける。パン!後は皮を剥ぎ、身をタコ糸の先にくくりつける。子供というのは、実に残酷である。それを池の中に放り投げ、待つこと十秒……ザリガニはその爪で蛙の身を、シッカと挟んでいる。「いっちょう上がり!」釣った十数匹の中から[アカマン]と子供たちが呼ぶ、真っ赤でデカイ爪を持つ一匹を、持ち帰る。
 タコ糸をアカマンの胴体に巻きつけ、背中に白いペンキで〝ジョン〟と書かれたペットを、勲は散歩させる。すぐに母に見つかり、ジョンは生まれ育った野池に、返される。

愚図愚図と酔いしれて…【一挙掲載版】

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