「ブルーリボン賞」主演女優賞「父と暮せば」宮沢りえ
「たそがれ清兵衛」で数々の「助演女優賞」を独占した…
「宮沢りえ」が!「ブルーリボン賞」で「主演女優賞」!
受賞作品「父と暮せば」は…「単館系」の「小さな作品」
「原爆」から「3年後」の「広島」を舞台にした「物語」
【ブルーリボン賞が決定-宮沢りえが主演女優賞】(サンスポ.com)
愚図愚図と酔いしれて…【028】
母の手料理で勲が気に入っているのが、牡蠣フライ。母が水洗いした牡蠣を布巾で水分を拭き取る。身をメリケン粉でまぶし、溶き卵の中に浸け、次にパン粉をまぶす。それを横の母が手際よく油で揚げていく。毒味と称して、つまみ食いも出来る。
「なあ、カキフライにしょうか?」「えっ、カキフライできんのん?」「任しとき!」形勢逆転、勲は二等兵から大将に昇進だ。通い慣れた市場へ行く。「おっちゃん、カキ二百匁ちょうだい!」「おヽいさちゃんかいな、なんや、今晩のおかずはカキフライか?」「う、うん…」「よっしゃ、いさちゃんのこっちゃ、勉強しといたるわ」秤の目盛りは二百匁を少し回っている。「いさちゃん、市場で顔やなあ…」財布から金を出しながら幸男は勲を見直す。パン粉にメリケン粉、卵、とんかつソースに食用油、箸。次に金物屋で卵を溶くボウルと、やや深めのフライパンを調達する。会計はすべて秘密基地の軍資金だ。基地に取って返し、勲は牡蠣フライの下準備に入る。皿など無い、すべて新聞紙だ。実際、市場で品物を包むのは、すべからく、新聞紙。幸男は家に戻り、キャンプの時に使うスウェーデン製のラジュースを持って来る。やはり、ええしだ。ラジュースも無事点火し、いよいよ調理開始だ。慣れた手際で勲は牡蠣を揚げていく…。「よっしゃ、できたでえ!」新聞紙で油がほどよく落ちたホコホコの牡蠣フライにとんかつソースをかけて、頬張る。「おいしい!いさちゃん、料理うまいなぁ」「まあな」勲も頬張る。美味い、母の作る牡蠣フライそのものだ。「コラ~ッ、そこで何しとるんや!子供が火ぃ使こうてからに、火事にでもなったらどうするんや!」有沢農機の寮長に見つかってしまった。いくら社長の孫とはいえ、寮長は幸男にも厳しい目線を遣る。昔の大人はどこの家の子供であれ、悪いことをすれば叱ったものだ。双方の親には内緒を条件に寮長は、ラジュース以外の物を没収した。かくして秘密基地は姿を消した。
有沢家と藤田家双方は幸男と勲をはじめとして、有沢家の長男、長女、次男、三男と藤田家の兄弟姉妹も交友を深めた。勲は週末が待ち遠しくてならない。週末は外泊が許される。勲の足でも二分とかからない所に幸男の家は有る。勲にとって幸男の家はパラダイスだった。社員食堂の娯楽室には卓球台、社長室にはデカイ木製の地球儀、例の空気銃も揃っている。大きな倉庫の二階は木の床。姉に買って貰った木製車輪のローラースケートで、農機類の部品が梱包されたダンボール箱の山の間を、滑走できる。もちろん幸男も同じスケートを持っている。


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