ハリウッド映画「SAYURI」渡辺謙&役所広司
「スティーブン・スピルバーグ」が「製作総指揮」!
「渡辺謙」&「役所広司」出演!映画「SAYURI」は
「愛」に生きた「芸者」の激動の「半生」を描くのだが
「愚図愚図と酔いしれて…」の「勲」の「半生」も激動?
【渡辺謙&役所広司ハリウッド映画「SAYURI」会見】(サンスポ.com)
愚図愚図と酔いしれて…【027】
<秘密基地キッチン>。幸男の家では大きなシェパードを飼っていた。数週間前、犬は死んだ。その犬舎が工場裏の従業員寮横の広場に放置されている。勲と幸男は学校終わりに、その広場で落ち合う。縦一メートル二十センチ、奥行き一メートル八十センチ、横三メートル、前面は鉄格子に扉付き。その犬舎の掃除にかかる。ホースの水で床の糞の跡を洗い流す。乾いた床に筵を敷く。この筵は勲の持ち込み。学習帳印刷用の巻き取り紙は、両側を丸い締め板で固定され、外側を筵で包まれている。その筵が秘密基地の床のカーペットと化す。その中に入っているだけで、心躍る。鉄格子から覗く外景はすべて敵陣だ。「ここに空気銃あったら、敵を狙い撃ちできるなあ…」そのうちそれだけでは物足りなくなる。基地には軍資金が欠かせない。幸男は自室にある小さな整理棚を持ち出し、それを金庫にする。中の軍資金は幸男の一月分の小遣いを充てる。その引き出しから金を出し、おやつを買う。どうってことのないこの行為が二人には、大人びた事に思えて愉しいのだ。勲は一日十円、その都度、母から貰う。だから秘密基地の軍資金は巨額だ。基地内では当然、軍資金を調達した幸男が大将、勲は二等兵役だ。文句は言えない。しかし、これまで遊んでいた仲間内で勲はいつもガキ大将だった。気分が悪い。そこで軍資金の使い道を大将に進言する。「幸ちゃん、おやつばっかり買うててもおもろないさかいに、どや、料理でも作れへんか?腹が減っては戦はできぬ」「いさちゃん料理作れるんか?」「得意やでえ」幸男の家には二人の女中が居る。やはり、ええしだ。家事一切をその二人が仕切っている。幸男が料理することなど考えられない。勲の家の女中は三年生の春に明石の田舎に帰って行った。後で分かることだが、藤田印刷は徐々に商売が左前になっていた。母は親子七人と住み込みの二人の職人の食事をきりもりしなければならなくなった。そこで勲が母の手伝いにかりだされる。市場への買出し。これが結構愉しい。味噌や砂糖などは何匁単位で買える。まだ尺貫法の時代である。卵でも買い手の希望個数で売ってくれる。縄で編んだ買い物籠を二つぶら下げて、市場に入る。「おっちゃん、白味噌と名古屋味噌まぜて三百匁ちょうだい!」「はいよ!三百匁やな」大きな擂り鉢に富士山のように盛られた味噌を木のへらで、削ぐ。それを薄い木の皮で作った船の器に盛り、秤に掛ける。ピタッ!目盛りが三百匁で止まる。「神業や!」そんな発見が勲を市場好きにする。


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