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2005.01.19

北島三郎「優しい時間」ゲスト出演「与作」気分?

「演歌界」の大御所「サブちゃん」が「19年ぶり」に…
「現代ドラマ」に出演!前回は「昭和61年」に放送された
連続ドラマ「ライスカレー」…これも「倉本聰」脚本!
「優しい時間」では「与作」気分で「薪割り」を熱演!
【北島三郎、ヘイヘイホ~と19年ぶり現代ドラマ】(サンスポ.com)

愚図愚図と酔いしれて…【013】

 行くな、行くな!僕を救出するのが先やろ!泣き声で言葉にならない。あろうことか、マッカまで僕を見捨ててケンボウの後を自転車で逃げて行く。友情もこれでお終いや。見とれよ、今に仕返ししたるさかいにな!全て勲の心の中の叫びである。勲は、ひたすら泣き叫んでいるばかり。「助けてくれ~っ!」鮒釣りの連中に勲のSOSは、届かない。
 「うえ~ん、うえ~ん…」春のやわらかい陽ざしの下、勲はまるでフランケンシュタインのように、両手をだらりと下げ、足元に糞尿の滴を垂らしながら、トボトボと足を引き摺って、ひたすら家を目指す。パニックのあまり、自転車で来たことすら脳裏にはない。それとも、褒美で買ってもらった自転車を汚すと、ばばたんこにはまった事と合わせて母に叱られると思ったのか。重い足取りで三十分、ようやく家に辿り着く。しかし、その道程は、決して安穏としたものではなかった。泣きながら家路を急ぐ勲の滑稽な歩みは、近隣の町工場の若い職人らにとっては格好の野次の対象となる。「あいつアホや!ばばたんこ、はまりよったんや!臭っさあ…近か寄んな、あっちゃ行け!」なんかしとんねん!くそ田舎から集団就職で大阪に来た、田舎もん!はよ田舎帰れ!おまえらこそ、田舎くさいわ!ア~ホ~…。泣くばかりで声にならない。
 ジャージャージャー、父ですら勲に近寄らず、表で勲を立たせたままホースの水で服に纏わりついた糞尿を流し落とす。「こんな恰好、キヨちゃんに見られたらどないしょ…」日頃のやんちゃ坊主も形無しである。「そやけど、お母ちゃん居てんでよかったあ…」。勲の母は躾や言葉づかいに、とても口煩い。例の倉庫での『お医者さんごっこ』で半年間の〝倉庫立ち入り禁止令〟を出したのも、母である。もとはと言えば、蓬餅をつくる材料の蓬取りに行かせたのは母である。そのお使いに行ったとはいえ、なんと言う勲の失態ぶりか。この哀れな姿を母に見られたら、どんな雷が落ちることか。その点、父は優しい。「お母ちゃんは今日、近所の婦人会のおばちゃんらと歌舞伎座へ芝居観に行ってるさかいに、内緒にしとこ。早よ服脱ぎ、お父ちゃんがどこぞに片付けといたるさかいに…」。
 パンツ一枚という姿で父と表に出る。そんな格好で道を歩いていても誰一人として奇異な視線は寄こさない。下町のいいところである。午後三時、銭湯が開く。勲の家には当時としてはハイカラな、タイル張りの風呂が有る。心優しい父といえども、野壺に嵌まった身を内風呂には入れたくない。そこで銭湯である。勲の体は銭湯の大きな湯船のおかげで、もとに戻ったが、この後入る客は、知らぬが仏である。
 『野壺落下事件』は、母のあずかり知らぬ〝迷宮入り〟と相成った。勿論、次の日、勲は母特製の蓬餅の相伴にあずかった。

愚図愚図と酔いしれて…【一挙掲載版】

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