映画「ローレライ」主題歌を歌う「ヘイリー」17歳
「日本海軍」潜水艦の戦いを描いた映画「ローレライ」
主題歌を歌うのは「ニュージーランド」の「ヘイリー」
「17歳」の透き通った「歌声」が魅力的なのだが…片や!
「愚図愚図と酔いしれて…」BGM「VOICE」や如何?
【映画「ローレライ」を“応援”にヘイリー3月来日へ】(サンスポ.com)
愚図愚図と酔いしれて…【022】
あの橋を渡れば、もうすぐ旅館だ。人騒がしい。映画館の前に人だかりが見える。ショートヘアーを軽くカールさせた、勲と同年代の女の子がカメラのフラッシュを浴びている。「松島トモ子や!」数段どころか、月とスッポンのランク違いの子役、松島トモ子。顔の面積と不釣合いなデカ~イ目、こまっしゃくれた物言いと、歩くしな。「あいつ、ほんまに同い年かいな?」今、流行りのテレビの歌番組や映画で引っ張りだこだ。そういえば劇団「ひまわり」の子役、中山千夏は舞台を中心に、売れっ子だ。ロングランの『がしんたれ』で女優・三益愛子と共演し、子役を見事に演じている。勲のライバルだ。というのも、千夏は勲と同い年で、ましてや勲の住む大阪H区の隣、F市の薬局の娘だ。F市とは、父と足繁く通った映画館「昭栄座」のある街だ。負けてはいられない。しかし、千夏は『がしんたれ』の主役。勲はというと『馬喰一代』の幼年期の…あれだけの台詞しか与えられない…子役。これ又、月とスッポン。劇団の名前も「ひまわり」と「こびと座」。「ひまわり」は太陽の陽をいっぱいに浴び、青空に向かって伸びて行く。一方の「こびと座」―勲がテレビ業界に身を晒した時代から、「こびと」は放送禁止用語。母が人だかりの外から体をジャンプさせながら叫ぶ。「い~さ~おぉ~、見てみぃ~トモ子ちゃんやぁで~!」「知り合いか!」勲はまだ拗ねている。
自分が出演する映画でも観終わったのか、松島トモ子が、しゃなりしゃなりと通り過ぎて外車に乗り込む。車のテールランプの上のボディーラインが、天にそそり立つ。シボレーだ。ブゥンとアクセルを吹かして走り去って行く。「…そうか、お母ちゃんは僕と兄ちゃんを松島トモ子や中山千夏みたいな子役にしたいんや…」と。
『馬喰一代』幼年期の太平は丸坊主。大正時代の、それも馬喰の子倅が坊ちゃん刈りのわけがない。『おじいちゃんの飛行機』の二人は坊ちゃん刈り。勲は始めての丸坊主に、拗ねた。そこで、渋谷天外が勲におもちゃの
パトロールカーを買い与えた。
新橋演舞場の舞台は、昼の部が一時、夜の部は六時からの公演。『馬喰一代』は夜の部。舞台セットの建て込みは、午前十時から始まる。大道具の人たちが手際よくセットを組み立てていく。花道はフリースペース。勲はパトカーを掌で握り、車輪を花道の床に擦りつけ、前方に3~4回擦る。すると車輪にゼンマイの動力が伝わる。手を離す。ブゥン!パトカーは花道を舞台に向かって疾走する。「松島トモ子のシボレーと、えらい違いや…」
新橋演舞場での生活は勲にとって、非日常の別天地だった。演舞場の中には多くの、御茶屋がある。勲のお気に入りは和食の『三原屋』勲の顔を見ると、板さんがカウンター越しに「らっしゃい!」と威勢よく微笑む。勲はチョコンと腰掛ける。もう、一人で店に入れる。演舞場での舞台も二週間が過ぎた。母も帰阪し、小浜君の母が輪番制でやって来ている。「ヘイッ、鉄火巻き一本!」勲は、この鉄火巻きに嵌まっている。こんな美味いものがこの世にあるのか!母の蓬餅、『ふじや』の肉うどん『スエヒロ』のビフテキに次ぐ、勲の好物だ。「おっかさん、大阪に帰ぇちまったんだってねぇ…寿司食いねぇ」馬耳東風、勲の気は鉄火巻きへ行ったきり。「寂しいだろうによう…」気のいい板さんだ。付けは、劇団払い。勲が次に目指すのがパーラー『ミツヤ』この店のバナナをコチンコチンに凍らせた〝バナナアイス〟が最高。
「太平ちゃん、いつものネ!」役名が呼び名。ロングヘアーに大きな瞳、すず虫のような優しい声。濃くもなく薄くもない香水の香り。
勲はこの女性に嵌まっている。こんなにも美しい女性が、この世に居るものなのか。母代わりに甘える。だから、勲の「おいしいもん帳」のトップは『ミツヤ』のバナナアイスなのだ。


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