寺尾聰「優しい時間」富良野で見せる「役者魂」
「倉本聰」脚本の「優しい時間」で「連ドラ」初主演!
グループサウンズ「ザ・サベージ」時代を知る者としては…
「亡き父」である「宇野重吉」氏を彷彿させる演技を期待!
【寺尾聰、50代の快走…富良野で見せる熱い役者魂】(サンスポ.com)
愚図愚図と酔いしれて…【003】
J区の軍人住宅の中にあるA幼稚園の年少組に勲は入園させられた。させられた…勲の思いである。幼稚園に行くのがとにかく嫌だった。年少組は「ももぐみ」と「かえでぐみ」年長組は「ゆりぐみ」勲は「かえでぐみ」。
通い始めた頃は愉しみがあった。講堂での自転車遊び。子供用の自転車には、後輪の左右に補助のための小さな車輪が付いている。誰も補助輪なしでは乗れない。自転車は高級品で、よほどの金持ちの家の子供しか持っていない。だから園児たちは〝夢の乗り物〟自転車を取り合う。勲はいつも父に早い時間に幼稚園まで送ってもらう。勿論、父の自家用自転車だ。幼稚園に着くと一目散に講堂を目指す。「いちばんのりや!」肩から斜めにぶらさげた小さな黄色いバックもそのままに、自転車に飛び乗る。体重を左にかけペダルを踏む。講堂内を左回りにグルグルグルグル疾走する。二人、八人、十五人…もう定員オーバーだ。自転車は十五台しかない。乗っているのは、年少組ばかり。そこへ年長組の奴らが連れ立ってやって来る。
「おい、かせや!じぶんらもうええやろ!」年長組の奴らは体も年少組より、一回りデカイ。言われるままに、せっかく確保した自転車は乗っ取られる。泣き叫ぶ園児も多い。勲はというと声は出さねど、泣きっ面。「おかあちゃんにいうたるさかいにな!」心の叫び。こんなことが日々、つづく。勲の頭の中の思考は、もはや〝登園拒否〟。それは、父の知るところとなる。退園時間に父は毎日、自転車で迎えに来てくれる。勲の通園は送り迎え付き。父の自転車の後ろの荷台には座布団が紐で結んである。そこは勲の特等席だ。そこにチョコンと座って両手を父の腰に回すと何故かホッとして、涙が溢れ出す。嫌な幼稚園から救い出された気分なのだ。「勲、どうしたんや?何で泣いてるんや?」優しく問われると、いっそう悲しくなる。「おとうちゃん…もうようちえん…いくの、いやや…」「…そうかぁ…そんな行くのん嫌やったら、行かんでもええがな…」理由など聞かない。「そやけど、おかあちゃんにおこられるぅ…」「かまへん、お父ちゃんが、あんじょう言うたるさかいに…」父の腰に回した勲の小さな腕に、力がこもる。「勲、まだ昼やし、映画でも観に行こか?」「ほんま!」。


Comments
TBありがとうございます。
倉本聰さんの演出楽しみにしてます。
Posted by: 知恵蔵 | 2005.01.14 at 05:20 PM